大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和62年(ネ)1361号 判決

控訴人 株式会社ハウジングハセベ

右代表者代表取締役 長谷部尅彦

控訴人 有限会社内田電業社

右代表者代表取締役 内田邦雄

右両名訴訟代理人弁護士 佐川浩

被控訴人 株式会社富士銀行

右代表者代表取締役 荒木義朗

右訴訟代理人弁護士 海老原元彦

広田寿徳

竹内洋

馬瀬隆之

村崎修

奥宮京子

島田邦雄

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。

理由

一  当裁判所も控訴人らの本訴請求は理由がないからこれを棄却すべきであると判断する。その理由は、次につけ加えるほか、原判決理由説示のとおりであるから、ここにこれを引用する。

1  原判決書一二枚目表九行目中「2のうち、」の下に「被控訴人が訴外会社から原判決添付別紙約束手形目録(一)ないし(三)記載の約束手形三通の不渡処分を免れるための預託金各三〇〇万円の提供を受けたこと及び」を加える。

2  同一二枚目裏三行目中「乙第一号証の」の下に「二、」を、同五行目中「乙第一号証」の下に「の一」を、同六行目中「ことができ」の下に「、本件①、②の貸付けについて各手形の支払期日(満期)をもつてその弁済期と定めたものと解するのが相当であ」を、同七行目中「られる」の下に「抗弁(一)(2)の前段の事実、すなわち」を加え、同一三枚目表一行目中「認定を左右す」を「弁済期が変更されたことを認め」に改める。

3  同一三枚目表一〇行目中「右主張」から同裏一行目中「できない。」までを「不渡異議申立制度は、不渡手形の債務者が銀行取引停止処分を免れるため手形金相当額の金員を支払銀行に預託して異議申立手続を委託し、支払銀行において右不渡が手形債務者の信用に関しないものと認めて手形交換所に対し右預託金を提供して不渡届に対する異議の申立をしたときは取引停止処分を猶予するというものであり、右提供金ないし預託金が必要とされるのは、手形債務者に支払能力があり不渡がその信用に関しないものであることを明らかにするとともに、取引停止処分を回避するために異議申立が濫用されることを防止するためである。このような異議申立提供金および預託金の趣旨に鑑みると、これらの金員は、特定の手形債権の支払を担保してその信用を維持する目的のもとに提供されるものではなく、支払拒絶事由の不存在が確定したときに手形債権者に対する支払に充てることを目的として預託されるものでもないというべきであり、また、異議申立手続がとられても手形債権者の手形債務者に対する権利行使自体は何ら妨げられないものである。したがつて、手形債権者は、預託金返還請求権について自己の債権の優先弁済に充てるべきことを主張しうる地位を当然に有するものではなく、支払銀行の手形債務者に対する預託金返還債務を他の一般債務と区別し、支払銀行が手形債務者に対して有する反対債権をもつて右預託金返還債務と相殺することが、手形債権者との関係から制限されるものと解すべき理由は存しないと解すべきである(最高裁昭和四三年(オ)第七七八号同四五年六月一八日第一小法廷判決・民集二四巻六号五二七頁参照)から、控訴人らの主張は採用することができない。」に改める。

4  同一四枚目裏四行目中「機関である」の下に「ことは、当裁判所に顕著であるけれども、右(2)の当事者間に争いのない事実と(3)の事実がある」を加える。

二  したがつて、控訴人らの本訴請求を棄却した原判決は相当であつて、これが取消しを求める本件控訴は理由がない。

よつて、本件控訴を棄却する

(裁判長裁判官 舘忠彦 裁判官 牧山市治 小野剛)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例